残業代請求訴訟の裁判例
残業代請求訴訟の裁判例のうち、主なものをいくつかご紹介します。
今回、ご紹介する2つの裁判例は、いずれも、企業側が敗訴し、労働者側の残業代請求が認められたものです。
日本マクドナルド事件 東京地裁平成20年1月28日判決
いわゆる「名ばかり管理職」が問題となった事件で、未払い残業代請求が注目される大きなきっかけとなった事件です。
原告はファストフード店の店長で、会社に対し未払い残業代請求訴訟を提起しました。
労働基準法上、1日8時間、週40時間を超えて労働した場合、基本的に割増賃金、つまり残業代が発生します。
しかし、労働基準法41条2号には、管理監督者には労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されない、と定められているため、管理監督者には残業代請求権がない、という反論が、企業側からはよくされます。
日本マクドナルド事件においても、会社はそのような主張をしました。
これに対し、判決は、管理監督者に当たるかどうかは、店長という名称だけでなく、職務内容や権限、責任、給与等の諸点から判断すべきである、と判示しました。
そして、本件の原告は、店舗の営業時間の設定には本社の決定に従わざるを得ず、店舗独自のメニューの開発も予定されていないこと等を考慮し、管理監督者には当たらない、と判示しました。
医療法人康心会事件 最高裁平成29年7月7日判決
原告は、医療法人と雇用契約を締結していた医師でしたが、医療法人に対し、時間外の割増賃金に該当する残業代請求権訴訟を提起しました。
原告の賃金は年俸制で、その額は1700万円でした。
原告と医療法人との間では、時間外労働等の割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていましたが、年俸のうちいくらがこの割増賃金に当たるかは定められていませんでした。
判決は、基本給に割増賃金を含むとする合意も直ちに違法ではないとしつつも、この場合には、基本給部分と割増賃金部分が明確に判別できることが必要である旨判示しました。
そして、本件では、基本給部分と割増賃金部分を判別することはできないと判示しました。
同旨の判例として、高知県観光事件(最高裁平成6年6月13日判決)、テックジャパン事件(最高裁平成24年3月8日判決)等があります。
本判決は、高額の年俸制でも、このような理論が当てはまるとしたことに意義があります。
当事務所にできること
未払い残業代は、請求されると支払いを余儀なくされることが多いです。
未払い残業代請求をされた場合、企業側の反論はいくつかのパターンが考えられ、裁判例も数多く蓄積されています。
当事務所には、このような未払い残業代請求問題について詳しい弁護士が在籍しています。
お困りのことがありましたら、当事務所にご相談ください。