パワハラと会社の法的責任
職場で違法なパワハラが行われた場合、会社が負う法的責任は、主に①契約上の責任と②不法行為責任があります。
いずれの場合も、会社は、被用者若しくは被害者から損害賠償を請求されることになります。
契約上の責任
会社(使用者)は、労働者(被用者)に対して、雇用契約上の本来的義務だけではなく、労働者にとって快適な就労ができるように職場環境を整える義務(職場環境配慮義務)を負っています。
また、会社は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をすべき義務(安全配慮義務)を負っています。
したがって、会社は、パワハラの発生を防止する義務を負いますし、パワハラが発生した場合は、直ちにこれを是正する義務を負っています。
会社がこれらの義務を怠った場合、労働者に対して債務不履行責任を問われる場合があります。
不法行為責任
違法なパワハラが「事業の執行について」行われた場合、使用者である会社は、使用者責任(民法715条)に基づき責任を負うことがあります。
この場合、パワハラを行った上司や同僚は不法行為責任(民法709条)を負い、会社は使用者責任(民法715条)を負います。
また、零細企業などで代表者本人やそれと同視できる者によってパワハラが行われた場合は、会社そのものに不法行為責任(民法709条)が認められることもあります。
裁判例
ファーストリテイリング(ユニクロ店舗)事件(名古屋高裁平成20年1月29日判決、原審・名古屋地裁平成18年9月29日判決)
本判決は、(1)衣料販売店の店長が仕事上のミスを指摘されたことから、店長代理であった労働者の肩をつかんで壁に打ち付けるなどの暴行を加えたこと、(2)右労働者の休業中に、給与支払や社会保険の手続などの処理を担当していた管理部長が、当該労働者に「ぶち殺そうかお前」などと発言したことを認定し、それらの行為と労働者が妄想性障害になったこととの間には相当因果関係があるとして、加害者である店長らの損害賠償責任と会社の使用者責任を認めました。
当事務所にできること
近年、パワハラは増加傾向にあると言われ、社会問題となっています。
2020年6月1日(大企業2020年6月1日、中小企業2022年4月1日)からは、いわゆるパワハラ防止法が施行されたことから、パワハラについての会社に対する規制は強化され、パワハラ被害を訴え出る労働者も増加することが予想されます。
パワハラは自殺などの深刻な問題に発展しかねず、会社は損害賠償責任を負うだけでなく、企業イメージの失墜にもつながりかねません。
当事務所では労働チームを編成しており、労働問題に強い弁護士が在籍しています。
お困りのことがありましたら、当事務所にお気軽にご相談ください。