懲戒解雇について
懲戒解雇
勤務態度が悪い従業員を解雇したい場合,どのような点に気をつければよいでしょうか。
解雇には,普通解雇(整理解雇を含みます)と懲戒解雇がありますが,このうち懲戒解雇は,企業秩序を乱した労働者に対するペナルティ(懲戒処分)として行う解雇のことで,懲戒処分としては最も重いものになります。
従業員を懲戒解雇処分とする場合,退職金を支払わなくてもよい場合がありますが,退職金規程にその旨の記載があり,かつ,当該労働者の行為が,それまでの勤続の功を抹消してしまう程度の著しく信義に反する行為があったことが必要です。また,解雇予告手当の支払いを要しない場合がありますが,労働基準監督署長の認定(除外認定)を受けなければなりません。
懲戒解雇が有効であると言えるためには,客観的に合理的な理由を有し,かつ,社会通念上相当であると言えなければなりません。
(労働契約法15条等)具体的には,次の要件が満たされる必要があると解されています。
① 懲戒解雇事由が就業規則等に明示されており,これが労働者に周知されていること |
① 従業員が10名以下の企業の場合,就業規則の作成義務が無いため,就業規則が存在しない場合もあります。そのような場合は,懲戒解雇はできないことになります。
② 懲戒事由が定められていたとしても,これに該当するかどうかは,別途判断が必要であり,これは限定的に解釈されます。懲戒解雇事由の中には包括的な規定もありますが,懲戒解雇を言い渡す場合には,懲戒解雇事由に該当する具体的行為と,それがどの条項に違反するのかを通知書などで明確にしておく必要があります。
③ 通常,懲戒処分には,けん責・訓告・戒告,減給,出勤停止,懲戒解雇といった段階があります。労働者に懲戒事由に当たる行為があったとしても,その行為が,懲戒解雇に相当するような重大な服務規律違反行為や企業秩序違反行為といえるのかについては慎重な判断を要します。
④ 従業員の勤務態度が悪く,それが重大な服務規律違反や企業秩序違反といえるような場合であっても,一度も注意せずに懲戒解雇するというのは,相当な処分とは言えないと判断される可能性があります。書面等により「何度も注意した」或いは「懲戒解雇よりも軽い処分を検討した」という事実を証拠化しておくことが重要です。また,就業規則や労働協約に定められている場合は勿論,そうでなくても本人に弁明の機会を与えるべきです。