契約書作成
現在、企業間、企業対個人(個人事業主など)、個人対個人(いずれか一方が個人事業主である場合を含む。)で契約書を取り交わすことがあります。他方、契約書を取り交わすことなく取引等を行うこともあります。
契約そのものは、原則として、契約書を取り交わさなくても成立します。(但し、後述する通り、一部の保証契約等は契約書が必要ですし、建設業法等、業法により契約書の作成を原則とするものもあります。)
しかし、契約自体は成立しても、契約書を作成していないと不都合なことは少なくありません。
「契約書なき契約」が不都合である理由
(1) どのような合意内容かが曖昧になったり、将来、合意内容がわからなくなるおそれがある
契約書を取り交わさないまま、注文書・(注文)請書のみのやりとりで契約を成立したことにすることは珍しくありません。
このような場合でも、注文書・(注文)請書の裏面に契約条項が印刷されていればともかく(但し、後述するような問題はあります。)、何も記載されていなければ、一体どのような合意内容なのか、はっきりしません。
口頭での約束しかなければ「言った」「言わない」の問題になり、後々争いの原因になります。また、口頭の約束内容だけだと、記憶が曖昧になったり、お互いに記憶違いが生じることもよくあります。
あるいは、契約締結時に、合意内容に関するお互いの理解がそもそも食い違っていることもあります。契約書を作成していれば、理解の相違はかなり防げます。
(2) 争いになったとき(特に訴訟)、不利になる恐れが高い
「契約書」を作っておらず、合意内容をお互い確認の上書面化していなければ、将来、争いになったとき、話し合いがつかないことが多いです。
話し合いがつかないときには、通常、裁判(訴訟)になります。
訴訟になったとき、客観的に合意内容を文書化されたものがあるかないかにより、判断の仕方が大きく異なるのが日本の民事訴訟実務です。従って、契約書(またはこれに準じる書面(約款など))の有無により、訴訟が有利になるかどうかが決まりやすいです。
言い換えれば、契約書にない合意内容を訴訟で主張しても、一般的には認められにくいです。
(3) 契約書の作成が要請されている場合がある
一部の保証契約等は、契約を成立させるために契約書が必要です。
また、建設業法等の業法により、契約書の作成を原則とするものもあります。業法の規制があるときには、特定の事項を書面で合意していなければなりませんので、契約書等がないまま契約を締結することが事実上不可能なこともあります。(なお、注文書・請書の裏面に合意条項があれば足りることもありますし、約款を作成しかつその約款を相手方に提示すればよいこともあります。)
さらに、法律上、契約書の開示を求められるものもあるため(吸収合併契約書等)、このような契約を締結するときには、事実上、契約書を作成しなければならなくなります。
手元にある契約書式で十分か
(1) 相手方から提示された契約書案で十分か
契約書を作成することにしたとしても、その契約書が貴社(あなた)にとって有利であるとは限りません。
特に、契約を締結する予定の相手方から提示された文案(書式案)は、相手方にとって有利であり、貴社(あなた)にとって不利な内容がたくさん記載されていることも珍しくありませんので、注意が必要です。
(2)市販の書式・ネット上の書式で自作できるか
相手方から契約書式を提示されない場合、自分で契約書を作成しようとする人もいます。そのとき、市販の書式やネット上に出ている書式をそのまま流用する人も珍しくありません。
しかし、その自作(あるいは書式そのまま)の契約書を、あとから弁護士が見てみると、そもそも、今回の契約に適した市販の書式やネット上の書式を使っておらず、全く違う意味になってしまう書式を使っていたことがありました。このように、違った書式を使ってしまうと、訴訟になったとき、裁判所は全く別の契約ではないか、単なる形式的な書面ではないのか、などと疑われてしまうおそれがあります。
仮に、自作(あるいは書式そのまま)の契約書が、概ね今回の契約内容に則していたとしても、弁護士がその契約書式を具体的に検討してみると、当然記載していなければいけない条項が入っていなかったり、記載することが不利になる条項が入っていることもよくあります。
契約書の作成・検討依頼は弁護士に依頼すべき
以上より、契約書の作成、契約書式の検討は、弁護士に依頼するのが一番です。
契約書を作成したり、契約書式の検討を他の士業に依頼する方もいらっしゃいますが、日頃、裁判(訴訟)実務に携わっている弁護士が最も適切です。
他の士業に依頼した場合、その契約書の文言の根拠となる法令、判例などを理解していなかったり、訴訟実務を知らないため、不十分な書面になっていることもあります。