クレーマーへの対応とその注意点

クレーマーについて

 近年クレーマー問題に悩まされる企業が増えてきています。クレーマーは,言いがかりをつけて金品を要求してくるといったイメージしやすいクレーマーのみならず,自分の一方的な意見を押し付けようとお説教のように執拗に連絡をしてくるクレーマー,「会社たるものかくあるべき」などといって自らの社会的主張を繰り返して企業に対する批判を執拗に続けることにより,自らの優位性を誇示しようとするクレーマーなど,多種多様なクレーマーがいます。
 クレーマー問題を対策せずに放置すると,対応する従業員の士気の低下を招きますし,また,本来業務の時間が取れずに業績に影響が生じる場合もあります。場合によっては,クレーマーがその会社の監督官庁やマスコミを巻き込んで,問題を大事(おおごと)にしようとすることもあり,不必要な対応に時間を取られたり,レピュテーションリスクを抱えることとなりかねません。そのため,クレーマーについては,適切に対応することが必要不可欠です。

クレーマー対応の難しさ

 クレーマー対応の中で最も難しいのが,クレーマーが,もともとの問題点のみならず,対応者の態度,言い回し,言葉遣いなどといった些細なことをとらえ,さらなるクレームの理由としてくることです。言葉尻をとらえ,揚げ足を取る,というのはクレーマーの常套手段ですので,これに対する対応は,非常に難しいところです。
 また,クレーマーは,1日に何度も電話をかけてきたり,担当者以外とは話をしないなどと言ってきたりする場合がありますので,特定の担当者に負担が集中しやすい傾向にあります。そうすると,その担当者の業務に支障がでるばかりか,優秀な担当者であればあるほど,クレーマーの対応が集中して負担が重くなる危険もあります。

クレーマー対応の基本

 以上のとおり,クレーマー対応は容易とは言えず,会社のみで行うことは非常に困難です。そのため,基本的には弁護士に対応してもらうことが望ましいと考えられます。ただし,会社としては最低限,①対応方針の統一,②従業員の教育,③クレーマーの対応履歴の記録化,④法律専門家との連携の緊密化という4つの方策を講じておくべきかと思われます。

対応方針の統一

 まず,クレーマー対応に際して最低限必要なのは,その対応について統一した方針を作ることです。一般的には,マニュアルを作成し,これを順守するよう指示することが必要と考えられます。もし,担当者が勝手な対応をすれば,クレーマーから「○○さんは○○と言ったのに,なぜおまえは違うんだ」などといってますますクレームを激化させる危険があります。また,経営者に直接連絡をしてくるクレーマーもいますので,社内でのクレーマー情報の共有体制も構築しておくことが望ましいです。
 マニュアルの一例としては,①「電話対応の初期の段階で相手方の名前・住所・連絡先を確認することを定めておく」②「相手方から折り返し要求があった場合で折り返しが必要な場合にはできる限り迅速に対応する」③「要求に応諾しているととらえられかねない発言はしない」などというものが考えられます。マニュアル作成も,難しければ,顧問弁護士にご相談ください。

従業員の教育

 マニュアルを作るだけでなく,その方針を順守すべく従業員を教育しておくことも必要です。教育の際には,例えば過去のクレーマーの対応事例集を作成しておき,良い対応がどのようなものであったのかなどを共有することがわかりやすいと思われます。

クレーマーの対応履歴の記録化

 クレーマーの特徴として,実際には担当者が言っていないことを言ったと主張したり,そのように記憶をねつ造してしまっている場合が多くあります。そのため,対応履歴をきちんと残しておくことは必要不可欠です。
 最も容易な記録化の方法は,録音です。お客様相談室などのクレーム対応の部署がある場合には,その部署の電話についてはあらかじめ録音する旨を電話口でアナウンスしたうえで録音していると思いますが,事前に録音する旨伝えたうえで対応することは必要です。

法律専門家との連携の緊密化

 クレームには,対応窓口のみで解決するクレームから,弁護士が対応するほかないクレームまで幅広いクレームが考えられます。顧問弁護士であればクレームの大小問わず質問ができますし,あらかじめ顧問弁護士に相談しておけば,クレームが激化した場合も迅速な対応ができると思われます。
 また,クレーマーの中には誤った法的知識を有しているのにそれが正しいと誤信している場合も多いため,法律の専門家である弁護士に法的見解を尋ねることができれば,クレーマーの説得に役立つ場合があります。

当事務所の解決事例

 以上のとおり,クレーム案件についてどのように対応すべきかをお伝えしてきましたが,ある程度以上の困難な事案については,弁護士に委任することが望ましいと思われます。
 一般に,弁護士がクレーム対応を受任した場合には,クレーマーが直接会社に連絡することを禁じる旨記載した受任通知をまず送付しますので,その時点でクレーマーの対応に会社が煩わされる時間が激減することとなります。

 以下は,当事務所が扱ったクレーム事案の一例です。

・法的にも道義的にも開示義務のない資料の開示を,数時間・複数回にわたり執拗に求め,会社に乗り込むぞという暴言を吐いていたクレーマーについて,受任通知にて警告をしたところ,クレームが止まった事案。

・法令の解釈について,一方的な解釈を押し付けて,会社に義務のない行為を行わせようとしてきたクレーマーについて,最高裁判例等をもとに法令の解釈の誤りを指摘しつつ対応した結果,クレームが止まった事案。


・会社の担当者の対応が気に食わない等と言って,慰謝料を支払うよう執拗に求めていたクレーマーについて,法的に慰謝料等の支払い義務がなく,クレーマーの要望に応じられないことを弁護士が書面にて複数回説明したところ,クレームが止まった事案

returnTOP写真