平成30年労働者派遣法改正
(1)基本的な考え方
派遣先に雇用される通常の労働者(無期雇用フルタイム労働者)と派遣労働者との間の不合理な待遇差を解消することにあります。
派遣労働者の就業場所は派遣先であり、待遇に関する派遣労働者の納得感を考慮するため、派遣先の労働者との均等(=差別的な取扱いをしないこと)及び均衡(=不合理な待遇差を禁止すること)は重要です。
しかし、派遣労働者の場合、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わり、派遣労働者の所得が不安定になることが想定されるため、派遣労働者個人の段階的・体系的なキャリアアップ支援と不整合な事態を招くこともあり得ます。
(2)派遣元雇用主が為すべきこと(義務化)
派遣元雇用主は、派遣労働者の待遇について、以下のいずれかの方式により待遇改善・決定を行う必要があります。
【派遣先均等・均衡方式】 派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇
① 派遣元雇用主による比較対象労働者の待遇情報の提供(義務)
・派遣元事業主は、派遣先から情報提供がないときは、派遣先との間で労働者派遣契約を締結できません。
・「比較対象労働者」とは
派遣先が次の1)~6)の優先順位により「比較対象労働者」を選定します。
1)「職務の内容」と「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
2)「職務の内容」が同じ通常の労働者
3)「業務の内容」又は「責任の程度」が同じ通常の労働者
4)「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
5) 1)~4)に相当するパート・有期雇用労働者 (短時間・有期雇用労働法等に基づき、派遣先 の通常の労働者との間で均衡待遇が 確保されていることが必要)
6) 派遣労働者と同一の職務 に従事させるために新たに通常の労働者を 雇い入れたと仮定した場合における当該労働者提供
・提供する情報は、以下の通りです。
1)比較対象労働者の職務の 内容、職務 の 内容及び配置の変更 の範囲並びに雇用形態
2)比較対象労働者を選定した理由
3)比較対象労働者の待遇のそれぞれの内容(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合には、その旨を含む。)
4)比較対象労働者の待遇のそれぞれの性質及び当該待遇を行う目的
5)比較対象労働者の待遇のそれぞれを決定するに当たって考慮した 事項
② 派遣労働者の待遇の検討・決定
(均等待遇・均衡待遇が前提になります。)
③ 派遣料金の交渉・契約締結
④ 派遣労働者に対する説明
派遣元事業主は、雇入れ時に以下の内容を説明する必要があります。
・昇級の有無、退職手当の有無、賞与の有無、労使協定上の派遣労働者か否か、派遣労働者から申出を受けた苦情処理に関する事項
・不合理な待遇差を解消するために講ずる措置
また、派遣元事業主は、派遣労働者の派遣時に労働条件(賃金、休暇、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、労使協定対象者か否か)及び不合理な待遇差を解消するために講ずる措置を説明しなければなりません。
【労使協定方式】 一定の要件を満たす労使協定による待遇
過半数労働組合又は過半数代表者(過半数労働組合がない場合)と派遣元事業主との間で労使協定を書面で締結し,労使協定で定めた事項を遵守しているとき,原則として労使協定に基づき待遇が決定されます。
① 派遣元での労使協定の締結・周知
② 派遣元雇用主による比較対象労働者の待遇情報の提供(義務)
・「比較対象労働者」の意義は「派遣先均等・均衡方式」と同じです。
・提供される情報は、以下の通りです。
1)派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者に対して、業務の遂行に必要な能力を付与するために実施する教育訓練
2)給食施設、休憩室、更衣室
③ 派遣労働者の待遇の検討・決定
④ 派遣料金の交渉・契約締結
⑤ 派遣労働者に対する説明
派遣元事業主は、雇入れ時に以下の内容を説明する必要があります。
・昇級の有無、退職手当の有無、賞与の有無、労使協定上の派遣労働者か否か、派遣労働者から申出を受けた苦情処理に関する事項
・不合理な待遇差を解消するために講ずる措置
また、派遣元事業主は、派遣労働者の派遣時に労働条件(労使協定対象者か否か)及び不合理な待遇差を解消するために講ずる措置を説明しなければなりません。
(3)行政ADRの整備
派遣元事業主及び派遣先は、派遣労働者からの苦情につき、まずは自主的な解決に努めなければなりません。
しかし、自主的な解決が困難な場合は、都道府県労働局長は、紛争の当事者に対し、必要な助言・指導又は勧告をすることができます。
自主的な解決が困難な場合には、紛争調整委員会による調停が手続を利用できます。
同一労働同一賃金ガイドライン
(1)正式名称・適用開始時期
正式名称は「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」といい、厚生労働省が策定したガイドラインです。このガイドラインは令和2年4月1日から適用されます(但し、中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法に係わる部分については、令和3年4月1日からです。)
(2)ガイドラインの意義・適用範囲
このガイドラインは、いわゆる「正社員」(無期雇用フルタイム労働者)と短期間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者との間で待遇差が生じる場合において、その待遇差が合理的か否かにつき、原則となる考え方と具体例を明らかにしたものです。
従って、このガイドラインは派遣労働者のみに適用されるものではなく、いわゆる契約社員・パート・アルバイト等にも適用されます。
このガイドラインでは、短時間・有期雇用労働者、派遣労働者、労使協定方式が適用される派遣労働者のそれぞれについて、基本給・賞与・各種手当・福利厚生・教育訓練等において、「正社員」との合理的な待遇差であるか否かが示されています。