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2015.02.28

メルマガ(第4号)「近隣関係」について

 

1「秋深き隣は何をする人ぞ」という松尾芭蕉の俳句がありますが、今年の秋は随分と隣国との関係が問題となっています。日本と中国の「尖閣諸島の問題」、日本と韓国との「竹島の問題」は、相互に自国の領土であることを主張し・・・

「近隣関係」について
弁護士法人中村綜合法律事務所
弁護士中村雅男
あちこちから見応えのある紅葉の便りも届き、日一日と秋の気配が深まる季節となりました。皆様には如何お過ごしでしょうか。
 
1「秋深き隣は何をする人ぞ」という松尾芭蕉の俳句がありますが、今年の秋は随分と隣国との関係が問題となっています。日本と中国の「尖閣諸島の問題」、日本と韓国との「竹島の問題」は、相互に自国の領土であることを主張し、解決困難な見通しのつかない事件となっています。
国家間の問題を平和的に解決するための機関として、国際司法裁判所がありますが、これは紛争当事国が国際司法裁判所の裁判で解決することに同意しなければ、裁判が開始されない仕組みになっています。例えば、日本が竹島の領有権を主張して同裁判所に提訴をしても、韓国がこの裁判に応じなければ、裁判による解決はできません。
ここに、国際司法裁判所の限界があります。
 
日本国憲法は、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定しています(第32条)。裁判を受ける権利は保障されていますが、何らかの民事裁判を提起された人が、「自分には関係がない」と考えて、自分の主張を記載した答弁書も提出せず、裁判期日にも出席しないで裁判を無視した場合には、どうなるでしょうか。
このような場合にも裁判は開始され、相手方の主張した事実を自白したもの(つまり認めたもの)とみなされ、相手方の主張内容のままの判決が出される可能性があります(民事訴訟法第158条、159条、244条)。
従って、裁判所から訴状や呼び出し状が届いたら、必ずよく読み、不明なところがあれば裁判所に問い合わせをするなど適切な対応をする必要があります。これを怠ると、思わぬ不利益を蒙ることがありますから要注意です。
 
2ところで、隣国ならぬ隣人の関係は民法第209条以下に「相隣関係」として規定されています。
相隣関係についての規定には次のようなものがあります。
(1)隣地の使用請求権―この権利は、例えば、建物の建築や修繕に際し、必要な範囲で隣地の使用を請求することができます(第209条)。隣地の所有者は、当該使用を拒むことはできません。
(2)公道に至るための他の土地の通行権―周囲を他人の土地に囲まれていて、公道に通じない土地の所有者は、その他人の土地を通行することができます(第210条)。このような場合には、通行を拒むことができないということです。ただし、土地の分割によって公道に通じない土地が発生した場合には、分割された土地のみを通行することができます(第213条)。
(3)自然水流に対する妨害禁止―隣地から水が自然に流れてくる場合には、水流を妨害することはできません(第214条)。
(4)境界標の設置―土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で境界標を設置することができます(第223条)。境界標の設置を拒んだり、費用の分担を拒否することはできません。
(5)竹木の切除及び根の切り取り―隣地の竹木の枝が境界線を越えている場合には、その竹木の所有者に枝の切除を求めることができます(第233条1項)。また、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ってしまうことが可能です(同条2項)。
(5)境界線付近の建築の制限―建物を築造する場合には、境界線から50センチメートル以上離す必要があります(第234条)。ただし、建築基準法でこの民法の適用が排除されることがあります。
相隣関係の条項は以上の他にも数条項があります。これらは隣接地の利用の調整を図り、或いは最小限度の利用制限を加えているものです。
 
2以上の「相隣関係」とは別に、隣人間の権利関係を調整する法的な基準があります。例えば、騒音や振動、汚臭、排煙等の問題についての「受忍限度」という考え方です。これらの生活環境に関する問題については、特別の法令で規制されることがありますが、直接規制する法令がない場合でも、通常一般人が許容すべき限度(受忍限度)を超えた騒音や汚臭等を発生させたときには不法行為が成立することがあります。この場合には、その差し止めや損害賠償が請求できます。
一例を挙げますと、マンションの隣人のピアノの音が受忍限度を超える場合、通常はその是正を求め改善を求めた後になると思いますが、損害賠償請求などの法的手措置が可能となります。
 
隣人関係の問題がこじれると思わぬトラブルとなり、喧嘩や訴訟などに発展し、不愉快な状況が発生することになります。お互いの立場や権利を尊重し、行き過ぎることのない節度のある生活や配慮が求められます。
以上
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