協同組合における理事会の運営

協同組合の理事会

理事会の意義

理事会とは、理事によって構成される組合の業務執行を決定する機関です(法36条の5第2項、第3項)。
組合は、理事会を置かなければなりません(法36条の5第1項)。

理事会の権限

理事会は、法律・定款・規約によって総会の議決事項とされる事項以外のすべての業務の執行につき、決定する権限を持っています(法36条の5第3項)。
総会は、最高の意思決定機関なので、総会の議決できる事項について総会が行った議決に関しては、理事会も総会決議に反する決定をすることはできません。
理事会で決定した事項の実行は、代表理事にゆだねられます。
法が、理事会の権限と定めているもののうち代表的なものは、
① 業務の執行をすること(法36条の5第3項)
② 総会の招集の決定(法49条2項)
③ 代表理事の選定(法36条の8第1項)
④ 理事の自己契約・利益相反取引の承認(法38条1項)などです。
定款・規約で法定事項以外の事項を理事会の決議事項と定めた場合にも、理事会が決議することが必要となります。
理事会の権限は、特に理事会において決議すべきものと定められた事項以外は、代表理事に委任することができます。

理事会の招集

理事会は、各理事が招集します。但し、定款・理事会で理事会を招集する理事を定めたときはその理事が招集します(法36条の6第6項)。
監査権限限定組合以外の組合では、監事は、必要があると認めるときは、理事に理事会の招集を請求することができます。
監査権限限定組合では、組合員は、理事が組合の目的の範囲外の行為その他法令・定款に違反する行為をし、またはその行為をするおそれがあると認めるときは、理事会の招集を請求することができます。この請求は、理事に対し、理事会の目的である事項を示して行わなければなりません。
理事会を招集する者は、理事会の日の1週間前までに各理事に対して(監査権限限定組合以外の組合では各監事に対しても)、その通知を発しなければなりません。但し、この期間は、定款により短縮することができます。
招集通知は、書面によることを要せず、議案の内容を示すことも必要ではありません。
理事会は、理事全員の同意があるときは、招集手続をしないで開催することができます。

理事会の議決

理事会の決議は、議決に加わることのできる理事の過半数が出席して、その過半数で行います(法36条の6第1項)。
決議について特別の利害関係を有する理事は、決議に加わることができません(法36条の6第2項)。たとえば、理事と組合の契約を承認する理事会における当事者たる理事がこれに当たります。
議決権を行使できない理事は、理事会の定足数、可決要件上の理事の数には算入されません。

理事会の議事録

理事会の議事については、書面または電磁的記録をもって、開催日時・場所、招集者、議事の経過の要領及びその結果、出席者・議長等を内容とする議事録を作成しなければなりません(法36条の7第1項)。
出席した理事・監事は、議事録が書面をもって作成されているときは署名し、電磁的記録をもって作成されているときは電子署名しなければなりません。

理事会決議の瑕疵(かし)

理事会決議の瑕疵について、法は総会決議の瑕疵に関するような特別な規定は置いていません。手続上の瑕疵、内容の定款違反については、民法の一般理論により無効と考えられます。
招集権者による招集がなされなかった場合や、招集に必要な期間を置かずに招集がなされた場合は、決議は無効です。
最高裁昭和39年8月28日判決は、一部の理事に招集もれがあった場合は、原則として理事会決議は無効となりますが、その理事が出席しても理事会の決議の結果に何らの影響がないことが証明されたときは、理事会の決議の効力に影響がないとしました。
定足数を満たさないでなされた決議は無効です。
特別利害関係のある理事が議決に加わった場合について、最高裁昭和54年2月23日判決は、企業組合につき、特別利害関係を有する理事が加わってなされた決議は当然に無効ではなく、その理事の議決を除外してもなお決議の成立に必要な多数が存するときは、決議の効力を認めて妨げないとしました。
権限外の事項を決議した場合、その他決議の内容が法令・定款に違反する場合、決議は無効です。

当事務所にできること

理事会の運営に問題があると、後日、思わぬ紛争になることがあります。
その意味で法律の専門家である弁護士と相談のうえ、理事会を適切に運営することは極めて重要です。
理事会運営に疑問や懸念点がありましたら、当事務所にご相談ください。

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