ハラスメントの裁判で会社側が反論すべきポイント
ハラスメントと会社の責任
従業員がハラスメントを受けた場合に、会社が責任を負う構成としては以下が挙げられます。
(ア)使用者責任(加害者の雇い主としての責任、民法715条1項)
(イ)安全配慮義務違反、職場環境配慮義務違反(会社自身の義務違反、民法 415 条、709条)
(ア)使用者責任
⑴ 成立要件
使用者責任が認められるためには、以下の要件を満たすことが必要となります。
①加害者の行ったハラスメントが当該加害者自身について不法行為を構成すること
②加害者と会社の間に使用関係が存在すること
③当該ハラスメントが、職務の執行につき行われたものであること(「事業執行性」)
④会社が加害者の選任及び事業の監督について相当の注意をしたこと又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったという事情(免責事由)が存在しないこと
⑵ そして、かかる要件につき、以下の観点から反論することが考えられます。
①加害者の不法行為
加害者の行為が不法行為までに至らない行為であったこと(例えば、上司の部下に対する叱責があったとしても、それは業務上の指導の範囲を逸脱していなかった等)
②加害者と会社との間の使用関係
ハラスメントの加害者と会社との間に使用関係が認められない場合こと(例えば、カスタマーハラスメントにおける顧客等)
③事業執行性
福岡高判平成12年1月28日判タ1089号217頁では、上司が部下の自宅へ夕食を取りに行った際に行われたセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」といいます。)について、時間的、場所的にみて職務の範囲内の行為とは認め難いとして、事業執行性を否定しており、この観点から反論することが考えられます。
(イ)会社の安全配慮義務違反、職場環境配慮義務違反(民法415条、709条)
⑴ 会社自身にかかる義務を果たさなかったことに関する過失がなければ、上記義務違反は成立しません。
具体的には、通常の会社に期待される水準の注意を尽くしても、ハラスメントがなされることを予見することができない(予見可能性を欠く)場合、又は、結果が生じることを回避できない(結果回避可能性を欠く)場合には、過失がなく義務違反が認められないこととなります。
⑵ 岡山地判平成14年11月6日労判845号72頁は、上司のセクハラが、職務を行うにつきなされたものではなく個人的な行動で行われた場合であった事案において、会社が上記職場環境配慮義務を尽くし、セクハラに関する方針を具体的に従業員に対して周知・啓発する方策をとったり、セクハラ等に関して従業員が苦情・相談できる体制を整備したりしていたとしても、この行為を防止できたとは認められないとしており、結果回避可能性がないことを根拠に義務違反を否定しているものと考えられます。
当事務所でできること
このように、ハラスメントを受けたことを理由に、会社が損害賠償請求された場合の反論すべきポイントはいくつかありますが、そのためには、会社において、日頃からハラスメントが行われないように配慮している必要があります。
当事務所では、労働に詳しい弁護士がおりますので、ハラスメント対策等につきお気軽にご相談ください。