整理解雇について

業績不振のため,整理解雇による人員削減をしようとする場合,どのような点に注意したらよいでしょうか?

労働契約法16条は「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めておりますが,裁判例では,整理解雇の有効性を判断するに当たり,次の4つの要件または要素を検討していると言われています。

①解雇をする経営上の必要性
②解雇を回避するための手段を尽くしたこと
③被解雇者の選定基準とそれに基づく選定が合理的であること
④解雇をする前に十分な説明・協議を尽くしたこと

① まずは,整理解雇をする経営上の必要性が認められなければなりませんが,これは,「企業の維持存続が危うい程度に差し迫った必要性」といった高度の必要性までは必要でなく,「企業の合理的運営上やむを得ない措置」といった程度でも認められた例はあります(東洋酸素事件―東京高判昭和54年10月29日)。もっとも,整理解雇は,労働者に特段の責められるべき理由がないのに,使用者の都合により一方的になされるものですので,必要性の判断には慎重を期すべきであるとする裁判例も散見されます。

② 次に,何をすれば,解雇を回避するための手段を尽くしたことになるのかについてですが,解雇を回避するためにとるべき手段の内容・程度は,人員整理の必要性の程度によって決まります。つまり,企業が倒産の憂き目にあっているなどの危機的状況にある場合には,軽度の解雇回避努力で足りるでしょうが,深刻な経営不振の状況にはないものの,余剰人員の整理の必要があるというに過ぎない場合には,最大限の解雇回避努力が求められます。

経営者は,希望退職の募集,配転・出向,一時帰休,労働時間の短縮,残業の停止,昇給停止,新規採用の停止,臨時従業員の雇止めといったものの中から,実施可能なものを選択・実施していくことが必要です。

③ 被解雇者の選定基準は,大きく分類すると,経営側の事情による基準と,労働者側の受ける不利益を勘案した基準とに分けられます。前者の例としては企業貢献度や勤務成績等,後者の例としては被解雇者の年齢や家庭状況があります。経営者は,被解雇者の選定に当たり,客観的で合理的な基準を設定し,これを公正に適用して行う必要があります。

④ 最後に,被解雇者に対する説明・協議ですが,就業規則や労働協約に規定がない場合であっても,信義則上,整理解雇の必要性,時期,規模,人選の方法等を説明・協議する機会を設けるべきとする裁判例が多いです。

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