配転・出向について
配転について
配転とは、職務内容・勤務場所の一方または双方を相当の長期にわたって変更すること(配置転換・転勤)です。
日本では配転命令により正社員の配転がよく行われますが、配転命令が無効とされ、認められない場合もあります。
まず、労働契約締結(採用)時に、職種や勤務場所を限定する合意(限定合意)があれば、その範囲を超える配転の配転命令は無効(労働者の個別的な同意が必要)です。
限定合意がない場合、総合職の正社員であれば、通常、採用時の合意内容から会社に配転命令権があると解されます。しかし、必ずこれがあると解されるとは限らないため、就業規則や労働協約に「業務の都合で転勤、配置転換を命ずることがある」などの規定をしておくべきです。
もっとも、このような規定があればどのような命令でも許されるというわけではありません。配転に業務上の必要性がなければなりませんし、その必要性があっても、不当な目的や労働者に過度の負担を強いるような場合には、配転命令権の濫用として命令は無効とされますので注意が必要です。
例えば、労働組合での活動や思想・信条を理由とする不利益な配転命令のほか、労働者の技術や技能をいわば台無しにしてしまうような配転命令は、権利の濫用と評価される可能性があります。また、労働者の私生活に不利益を生ずる場合も権利の濫用と評価される場合がありますが、単身赴任などの通常予想される程度の不利益は労働者が甘受すべきとされ、権利の濫用にはならないのが通常と思われます。
出向について
出向は、配転とは異なり、労務の提供先が変わる(別の企業の職場で働く)ことになるものであるため(但し、転籍のように元の企業との労働契約を終了させるものではありません)、配転の場合よりももっと明確な労働契約上の根拠が必要です。
従って、労働契約時に出向について明確な同意をするとか、労働協約・就業規則に明示の根拠規定を設ける必要があります。ただし、裁判所はこのような明確な根拠に、出向先の労働条件・処遇、出向期間や復帰の条件について、労働者に著しく不利益でない内容が定められていることを要するとする傾向があります。
これらの要件を備えた出向命令も、権利の濫用と評価される場合があります。この評価の際には、出向を命ずる必要性、労働者の選定の合理性等が判断の事情になりますが、親子会社等のいわゆるグループ関係企業への出向は権利の濫用にならないのが通常と思われます。