団体交渉の進め方

団体交渉に応じる義務

使用者が,労働組合が申し入れた団体交渉に応じないことは,不当労働行為として禁止されているので(労働組合法7条2号),団体交渉に応じる義務があります。

では,使用者が,労働組合に団体交渉を申し込まれた場合,どのように進めていけばいいのでしょうか。

 

交渉ルールの設定

団体交渉を円滑かつ効率よく進めるためには,団体交渉前に労働組合との間で交渉ルールを設定することが望ましいです。交渉の日時,場所,出席者,使用言語を交渉ルールとして設定することで,その後の団体交渉を円滑に進めることができます。交渉ルールの内容の詳細は,「団体交渉を申し込まれた場合の初動対応」に記載がございますので,そちらをご覧下さい。

 

組合員名簿の提出

使用者は,労働組合から団体交渉の申し入れをされた際,その労働組合に組合員名簿の提出を求めましょう。団体交渉は,組合員の労働条件について交渉をするため,組合員が不明であると,応じる義務のある団体交渉事項か否か判断ができないからです。また,例えば三六協定を締結できる組合といった過半数労働組合かどうかの判断には組合員の人数の把握が必要となります。

しかし,労働組合には,組合員名簿の提出に応じる義務はないので,組合員名簿提出を拒まれる可能性があります。労働組合から拒まれた場合には,使用者として直ちに団体交渉を拒否するのではなく,組合員名簿が必要な理由を伝えて,組合員を把握するよう努めてください。

 

交渉態度

使用者の交渉態度が不誠実だと評価されると,誠実交渉義務に反するとして,団体交渉の拒否にあたると判断されるので,交渉態度には注意が必要です。

例えば,吊し上げ,暴行,脅迫,監禁等を用いる行為は,交渉とはいえませんので,決して行ってはいけません。逆に労働組合側がこれらの行為に至った場合に,使用者がその場で団体交渉を打ち切ることは,誠実交渉義務の観点から許容されます。この場合,使用者は,労働組合に対して,暴力行為等を止めない限り,交渉は再開できないなどと文書で通達しておくと良いでしょう。

その他,誠実交渉義務に関する詳細は,「団体交渉における協議事項・内容」をご覧下さい。

 

団体交渉が行き詰まった場合

使用者が,誠実交渉義務に従い,労働組合と一定期間継続して団体交渉を重ねた結果,交渉が膠着状態に陥った場合,団体交渉を打ち切ることは,誠実交渉義務に直ちに反するとはいえません。そもそも使用者には,労働組合の要求を受諾する義務はないですし,特定の協議事項について時間的制約なしに交渉を継続する義務もありません。そのため,使用者は,団体交渉が行き詰まった後に団体交渉を拒否しうるといえます(池田電器事件・最高裁平成4年2月14日参照)。

しかし,使用者が,労働組合からの再度の団体交渉開催を要求された場合,これを拒絶していいのか否かの判断は,団体交渉の内容,経緯等の事案ごとに判断されることになります。この判断は,非常に難しいので,団体交渉が行き詰まった場合に,安易に団体交渉を拒否しないようにしましょう。仮に,団体交渉を拒否するのであれば,予め労働組合にこれまでの経緯や団体交渉が膠着状態にある事情を,文書で通知するなど証拠化しておくと良いです。

 

当事務所でできること

団体交渉の進め方には,誠実交渉義務があることから,常に労働組合に配慮した進め方をする必要があります。配慮を欠いた団体交渉の進め方をすると,不当労働行為と評価される可能性があります。また,どのような場合に団体交渉を終わらせるのか等の法律判断は難しく,団体交渉の申し入れがなされた際には,速やかに弁護士に相談していただくのが重要といえます。

当事務所では,団体交渉の進め方についてのアドバイス業務や団体交渉に代理人として出席することも可能ですので,お気軽にご相談ください。

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