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お店の外観や商品陳列デザインを真似された場合、権利保護を受けられる?

1.不正競争防止法は、特許庁に出願しなくても権利行使できる
 
不正競争防止法は、商標権・意匠権等と異なり、特許庁に出願し同庁の審査を経なくても、一定の場合、保護が受けられる点で、使い易い法律です。また、一般の不法行為のように損害賠償請求のみにとどまらず、差止請求もなしうる点も特徴的です。
さらに、商標権・意匠権等にとどまらない範囲でも、保護される余地があります。
しかし、不正競争防止法による権利保護は、使いやすく柔軟な面がある一方、その限界もあることには十分注意する必要があります。
 
例えば、かつて、「お店の外回りの外観が似通った店を、競合他社が出店している。何とかならないか」という類の相談がありました。
また、「お店の中の商品の陳列棚の並びやデザインを、競合他社がまねをしている。何とかならないか」という類の相談もありました。
 
確かに、お店の外観や陳列のデザインを作るには創意工夫もあったでしょうし、独自性もあるかもしれません。お店の外観の似通った競合他社の店舗が出店された場合、勝手に真似された、お客を横取りされる、等の疑問が出てくるのもわからないわけではありません。そして、これらのデザインを商標・意匠等として権利保護することは必ずしも容易ではないため、不正競争防止法による権利保護が問題になります。
これらについては、最近、いずれも裁判例が出ており、今後の動向が注目されます。
 
2.店舗外観(外装及び内装)は不正競争防止法で保護されるか?
 
 まず、お店の外観については、大阪高裁平成19年12月4日判決があります。
 
この判決は、原告「まいどおおきに食堂」等を展開する外食産業のフランチャイズチェーンが、被告「めしや食堂」「ザめしや」等を展開する外食産業チェーン店を訴えた事件です。
 原告は被告に対し、店舗の外観全体が類似しており、不正競争防止法2条1項1号又は2号にいう「商品等表示」の誤認混同を生じさせるとして、差止及び損害賠償請求をしました(なお、実際の訴訟では、「まいどおおきに食堂」と「ザめしや」との名称の類似性・誤認混同を理由とした不正競争防止法違反も争っていましたが、こちらは認められませんでした。)。
 判決は、「めしや食堂」等の店舗の外観は「まいどおおきに食堂」の店舗の外観とは類似していないとして、「まいどおおきに食堂」側の訴えを退けました(地裁も高裁も同じ結論でした。)。
 
 高裁判決は、基本的には地裁判決(大阪地裁平成19年7月3日判決)を引用していますが、地裁判決では、①店舗看板の表示、書体等につき、原告の看板と被告の看板を対比して外観・称呼の類似性を判断したところ、両者に類似性がないとしました(「まいどおおきに」と「めしや」を比較すれば、類似しているとは言い難いでしょう。)。
 その上で、②店舗看板の設置の有無、看板の絵の描写の有無、書体、看板の形状(正方形か、長方形か、縦長か横長か、看板の周囲の色等)、③木目調のメニュー看板の有無、字体、記載方法、設置方法、④ボード状メニュー看板の形状(縦長か横長か)、書体、看板の色(ホワイトボードか黄色かその他の色か)、⑤店舗のポール看板、⑥外装の配色、⑦その他の店舗の内装につき、構成要素毎に対比して、類似性を判断し、類似性がないと判断しております。
 高裁では、控訴人(原告)は上記に加え、個々の看板についても「全体的な印象を重視すべき」、「類似性の判断は離隔的に観察すべき」等との主張したものの、表示されている外観・称呼の相違が大きいことを理由に、看板の外観の類似性を否定しました。
さらに高裁では、自らの店舗外観全体が強い識別力を有し、個々の構成要素の全体的組み合わせが需要者に与える印象が共通しているため、出所に認識に混乱が生じる、と原告(控訴人)が主張しましたが、
高裁は「店舗外観全体・・・が類似するというためには少なくとも、特徴的ないし主要な構成部分が同一であるか著しく類似しており、その結果、飲食店の利用者たる需要者において、当該店舗の営業主体が同一であるとの誤認混同を生じさせる客観的なおそれがあることを要する」と判示しました。
その上で、本件で主要な構成要素と認定された店舗看板とポール看板の類似性が否定されたため、本件では類似性が否定されました。
 なお、内装部分については3点ほどの類似性は認められたものの、いずれも「ありふれたもの」である等の理由で、原告(控訴人)の請求をしりぞけました。
 
 ポイントは、①店舗外観の類似性を争う場合でも、裁判所は基本的に構成要素毎に比較すること、②店舗外観全体の類似性が認められる場合は、その中で特徴的ないし主要な構成部分が同一又は類似しており、その結果、一般の利用者・消費者が同一の営業主体と誤認混同するか否かにより判断されるということです。
 単に全体的な印象が類似していても、そのことをもって店舗外観全体が類似していることを理由に不正競争防止法違反の主張は認められないことです。
 
3.商品の陳列デザインは不正競争防止法で保護されるか?
 
 次に、商品の陳列デザインについてはどうでしょうか。
 これについても、大阪地裁平成22年12月16日判決があります。
 
 この裁判例は、ベビー・子供服の陳列のために使用しているいくつかの商品陳列デザインが個別に、又は全体の組み合わせとして、他社の商品陳列デザインと類似していることを理由に、不正競争防止法2条1項1号又は2号を根拠に差止・損害賠償請求をしたものです。
 
 判決は、そもそも商品の陳列デザイン自体が「営業を表示」したものといえるかどうかが争点になりました。
これについては、本来的には商品の陳列デザインは営業表示には当たらないが、「顧客によって当該営業主体との関連性において認識記憶され、やがて営業主体を想起させるようになる可能性が一概に否定できない」と判示しました。
つまり、商品の陳列デザインも営業表示たり得るとの判断を示したものです。
 
 しかし、判決は、その後、「商品陳列デザインだけが、売場の他の視覚的要素から切り離されて営業表示性を取得するに至るということは考えにくい」とし、「商品陳列デザインそのものが、本来的な営業表示である看板やサインマークと同様、それだけでも売場の他の視覚的要素から切り離されて認識記憶されるような極めて特徴的なものであることが少なくとも必要」として、大幅に営業表示性を限定しています。
 
 その上で、原告の営業実績、原告の商品陳列デザインを除く原告店舗の外観内装等の特徴、店舗での営業方法の特徴、原告店舗の商品陳列デザインの変遷、原告店舗の広告宣伝状況を検討した上で、競合他社の店舗内の商品陳列デザインをも検討し、原告の主張を斥けました。
 
 いずれにせよ、不正競争防止法第2条1項1号及び2号の「商品等表示」(これに営業の表示も含まれる)に該当しない限り、商品の陳列デザインをもって同法による保護を受けることはできないため、商品陳列デザインに限らず、内装・ディスプレイの模倣・類似性をもって不正競争防止法による保護を求めるには、自ずと限界があることに注意が必要です。