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行政行為の効力

最判昭和301226日民集9142070
主要な争点
① 訴願裁決を裁決庁がみずから取り消すことは違法か。
② 訴願裁決庁がその裁決をみずから取り消すことが違法な場合,取消処分は当然に無効となるか。
事案の概要
Xは,Y所有の本件農地について,昭和20年頃当事者間に成立した賃貸借契約により賃借権を取得したと主張し,Yとの間に争いを生じ,の調停申立てにより水戸地方裁判所で調停がなされた。
その後,Ⅹは,訴外M村農地委員会に賃借権回復の裁定を申請したところ,同農地委員会は,昭和237月農地調整法附則33項により,の賃借権設定の裁定を下した。
この裁定を不服とするYは茨城県農地委員会に訴願を提起したが,昭和2412月訴願を棄却する裁定がなされた。
ところが,県農地委員会は,Yの申出によって上記の裁決について再議をし,その結果,昭和266月,Yの主張を相当と認め,上記の訴願棄却裁決を取り消したうえ,改めて訴願を認容する裁決を下して,M村農地委員会の行ったⅩの賃借権設定の裁定を取り消した。
Ⅹは,Yを被告として本件農地についての耕作権の確認と引渡しを求めて出訴したが,第1審,第2審ともⅩは敗訴。X上告。
判旨
「本件において茨城県農地委員会は,YがM村農地委員会のした裁定を不服として申立てた訴願につき,昭和241223日附で訴願棄却の裁決をしながら,さらにYの申出によって再議の結果,昭和26629日附をもって先に棄却したYの訴願における主張を相当と認め,前記訴願棄却の裁決を取り消した上改めて訴願の趣旨を容認するとの裁決をしたことは,原判決の確定したところである。そして,訴願裁決庁が一旦なした訴願裁決を自ら取り消すことは,原則として許されないものと解すべきであるから……県農地委員会がYの申出により原判示の事情の下に先になした裁決を取り消してさらに訴願の趣旨を容認する裁決をしたことは違法であるといわねばならない。しかしながら,政処分は,たとえ違法であっても,その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認むべき場合を除いては,適法に取り消されない限り完全にその効力を有するものと解すべきところ,‥‥県農地委員会のなした前記訴願裁決取消の裁決は,いまだ取り消されないことは原判決の確定するところであって,しかもこれを当然無効のものと解することはできない。」
コメント
公定力の根拠については,古くは,行政行為には適法性の推定が働くからであるとの説明がなされていたが,現在の通説的見解は,取消訴訟を定める行政事件訴訟法の存在に根拠を求めている(「取消訴訟の排他的管轄」)。
とはいえ,上記は形式的な説明にすぎず,公定力の必要性・有用性については疑問とする見解も有力である。