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相続税の計算方法について教えてください。
 
1.総論
相続税の計算は,各人が取得した財産から直接各人の負担すべき金額を算出するのではなく,まずは相続財産全体(課税遺産総額)にかかる相続税の総額を計算し,その後にその合計額を各人に配分するという仕組みになっています。
 
2.各論
納付税額の算定は、以下の計算方法を用いて算出されます。
(1)各人の課税価額の算定
各人の課税価額= 各人の純資産価額+相続開始前3年以内の贈与財産の価額
 
各人の 純資産価額(赤字のときはゼロとする)=民法の規定に従って相続や遺贈により取得した財産+みなし財産( ex. 死亡保険金)+相続時精算課税による贈与財産-非課税財産( ex. お墓・仏壇)-債務(葬式費用含む)
※相続時精算課税とは…生前贈与の際に通常の贈与に比べて税負担を軽くする代わりに,相続時に贈与財産も含めて相続税を計算し,払った贈与税は相続税から差し引いて精算する制度。高齢者が保有する資産を若い世代に早めに移転させることを目的として平成15年に導入されました。
※非課税財産としての祭具は,日常礼拝の用に供しているものをいい,商品、骨とう品又は投資の対象として所有するものはこれに含まれないとされています(相続税基本通達12-2)。よって,余りに高価な物(金の仏像など)は,非課税財産と認められない可能性があります。
 
(2)課税遺産総額の算定
課税遺産総額=各人の課税価額の合計額-基礎控除額
※基礎控除額とは…相続税の課税対象から除外される金額であり,次のように算出されます。
3000万円+600万円×法定相続人の数
 
(3)相続税の総額の算定
ア 上記(2)で計算した課税遺産総額を,各法定相続人が民法に定める法定相続分に従って取得したものと仮定して,各法定相続人の取得金額を計算します。
法定相続分に応じる各法定相続人の取得金額=課税遺産総額×法定相続分
イ 各法定相続人の取得金額ごとに税率を乗じて相続税の総額の元となる税額を算出します。
算出税額=法定相続分に応じる各法定相続人の取得金額×税率-控除額
cf.相続税の速算表(平成27年1月1日以降適用)

法定相続分に応じる各法定相続人の取得金額 税率 控除額
1000万円以下 10%
1000万円超      3000万円以下 15% 50万円
3000万円超      5000万円以下 20% 200万円
5000万円超         1億円以下 30% 700万円
1億円超            2億円以下 40% 1700万円
2億円超            3億円以下 45% 2700万円
3億円超            6億円以下 50% 4200万円
         6億円超  55% 7200万円

ウ 各相続人の算出税額の合計が相続税の総額となります。
 
(4)各相続人が負担する税額の計算
あ)各人の課税価格(上記(1))の割合で按分
上記(3)で計算した相続税の総額を,各人が取得した正味財産額であるところの課税価格(上記(1))の割合で按分し,各人の相続税額を算出します。実際の遺産分割は必ずしも法定相続分どおりではありません。各人は実際に取得した財産の割合に応じて相続税を負担するのが公平であるということです。
い)税額控除
次に,各人の相続税額から,各人の特性に応じた税額控除( ex.配偶者控除)を差し引いた残りの額が各人の納付税額になります。
※ただし,財産を取得した人が被相続人の配偶者,父母,子供以外の者である場合,税額控除を差し引く前の相続税額にその20%相当額を加算した後,税額控除を差し引きます。
 
<計算例>
相続人は妻(50歳)と長男(23歳),次男(18歳)。相続財産の合計額が4億円であり,非課税財産が3500万円,債務(葬式費用を含む)が5500万円であった。遺産分割により,妻が60%,長男が25%,次男が15%取得することになった。各人の相続税額はいくらか。
 
ステップ(1)(2)
各人の課税価額の合計額   -   基礎控除額    =  課税遺産総額
       4億円                            3000万円
-  3500万円(非課税財産)        600万円× 3
- 5500万円(債務)                 
31000                           4800万円       =  26200万円
 
ステップ(3)
ア 課税遺産総額を,相続人が法定相続分どおりに取得したものと仮定して各人の取得金額を計算
妻   :2億6200万円×1/2=1億3100万円
長男:2億6200万円×1/4=6550万円
次男:2億6200万円×1/4=6550万円
イ 各相続人の法定相続分に応じる取得金額に税率をかけて相続税額を計算
妻   :1億3100万円×40%-1700万円=3540万円
長男:6550万円×30%-700万円=1265万円
次男:6550万円×30%-700万円=1265万円
ウ 従って,相続税の総額は6070万円となる(3540万円+1265万円+1265万円)
 
ステップ(4)
あ)各人の課税価格の割合で按分
 妻   :6070万円×60%=3642万円
 長男:6070万円×25%=1517万5000円
 次男:6070万円×15%= 910万5000円
い)税額控除
 妻   :配偶者控除により                       0円
 長男:                               1517万5000円
 次男:未成年者控除により   890万5000円
※配偶者控除とは…配偶者は,被相続人の財産形成に寄与していたと考えられること,配偶者の生活を保障する必要があることから,税額を軽減する措置が設けられています。配偶者は,法定相続分以内であるか,または法定相続分を超えて取得した場合でも、取得した財産が1億6000万円以下であれば相続税はかかりません。
本問では,法定相続分(1/2)を超えて取得しています(60%)が,取得した財産が1億5720万円(2億6200万円×60%)であるため,相続税がかからないことになります。
※未成年者控除とは…未成年者が成人に達するまでの養育費や教育費を考慮し,相続人が未成年者である場合,一定額をその未成年者の相続税額から控除することができるとされています。その計算式は次のとおりです。
控除額=(20歳-相続開始時点での年齢)×10万円(平成27年1月1日以降適用)
 
本問では,次男の年齢が18歳であることから,相続税額から20万円が控除されます( (20歳-18歳 )×10万円)。
 
課税価格の算定にあたって、預貯金や不動産などの資産の評価はどのように行われるのですか?
 
相続開始時(被相続人の死亡時)の時価によって評価するのが原則です。
 
しかし,相続や贈与により財産を取得する場合,対価を支払うことなく財産を取得するため,時価評価が困難な場合があります。評価する人によって価額が変わるのでは課税の公平性が損なわれてしまいますので,国税庁は財産評価基本通達という形で評価基準を定めています。
<財産評価基本通達の具体例>
宅地:路線価方式と倍率方式があり,当該宅地の所在地に応じてどちらの方式によって評価するか決められています。
※路線価方式とは…道路ごとに,道路に面している宅地1㎡あたりの価額が決められており(「路線価」。国税庁が毎年7月初旬に発表),これに基づいて評価する方法
※倍率方式とは…固定資産評価額にその地域ごとに国税局長が定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する方法
自宅家屋:固定資産税評価額
未上場株式:類似業種比準価額方式や純資産価額方式(及びこれらの併用方式),配当還元方式があり,同族株主等に該当するか否か,会社の規模等によって評価方法が変わります。
※類似業種比準方式とは…業種の類似する上場会社の株価を基にして,会社の業績等を表す基本要素である配当金額・利益金額・簿価純資産価額の3要素について類似する上場会社と当該評価会社とを比較して算出する方法
※純資産価額方式とは…当該評価会社が課税時期に解散・精算すると仮定した場合に株主に分配されるべき正味財産により評価する方式
※配当還元方式とは…その株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を,一定の利率 (10% )で還元して元本である株式の価額を評価する方法
 
相続税の申告期限までに遺産分割が成立していない場合にはどうなりますか?
 
相続税の申告期限は,原則として相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内(相続税法27条1項)ですが,それまでに遺産分割が成立しないことは大いにあり得ます。このような場合に相続税法は,未分割遺産については,原則として民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って取得したものとして課税価格を計算するとしています(相続税法55条本文)。
申告期限後に遺産分割がなされ,その分割により課税価格が申告済みの価格と異なることになった場合,相続税法は次のような処理方法を定めています。なお,これらの手続は,あくまでも任意のものであり,必ずしなければならないものではありません。
・法定相続分より多くの遺産を相続することになった相続人は,修正申告書を提出し,不足分の税金を納付することができる(同法31条)。
・法定相続分より少ない遺産を相続することになった相続人は,4ヶ月以内に更正の請求をして税金の取り戻しができる(同法32条1号)。更正の請求によって税金の取り戻しがなされるときには,その減額分について,多くの遺産を取得した相続人に対し,税務署長が増額の更正又は決定を行う(同法35条3項)。
  なお,配偶者控除による税額軽減を受けるためには,原則として,法定申告期限後3年以内に遺産分割協議が成立する必要があります(同法19条の2第2項)ので注意が必要です。