第36号 平成29年11月01日
晩秋の候、お健やかにお過ごしのこととお慶び申し上げます。
中村綜合法律事務所メールマガジン11月号(第36号)を配信いたしますので、ご一読いただければ幸いです(2017.11.1弁護士 中村雅男)。
□ 目 次 □
1.法律コラム:民法の約120年ぶりの大改正について~法定利率~
2.事務所セミナーのご案内
3. 裁判傍聴のすすめ~その①
1.民法の約120年ぶりの大改正について~法定利率~
今回のコラムでは、2017年7月3日のメルマガで予告しました民法の改正ポイントのうち、法定利率の改正についてご紹介いたします。
【現在の民法】
現在の民法では、お金の貸し借りの際などに、当事者が利息の利率を特に定めなかった場合に適用される利率(法定利率)は年5%、同じく遅延損害金の利率(法定利率)も年5%とされております。
例えば、一般人である貸主が一般人である借主に対して10万円のお金を貸して、1年後に返してもらうという約束をしていた場合に、利息も払うことにしていたものの利率を何%にするかまでは決めなかったという場合には、借主は貸主に対して、1年後に10万円の元本と5000円の利息を支払うことになります(ただし、利息を払うこと自体を合意していない場合には利息を支払う必要はありません。また、利息の利率を予め当事者が合意していた場合、原則として、その利率に従うことになります。)。
また、現在の民法では、上記の事例で、借主がこの借入金10万円の返済を怠った場合、借主は貸主に対して、支払を怠った金額に対して、支払期限の翌日から年5%の遅延損害金を支払うことになります(なお、遅延損害金を支払うことを合意していない場合でも遅延損害金を支払う必要があります。)。
【改正後の民法】
これに対して、改正後の民法では、法定利率及び遅延損害金の利率は次のとおりとされます。
すなわち、改正法の施行時(現時点では2020年6月までには施行される予定です。)には利率は3%とされ、その後も、3年に1回、短期貸付けの5年分の平均利率を基準として1%以上増減した場合には、法定利率も1%単位で変動するものとされます。
このような改正がなされた理由は、民法の法定利率が実勢金利と比べて高すぎることや実勢金利の変動に法定金利を合わせるべきであることなどにあります。
なお、変動する利率や遅延損害金の利率の基準時点としては、利息の利率についてはその利息が生じた最初の時点の利率に、遅延損害金の利率については遅滞の責任を最初に負った時の利率によるとされます。
例えば、2024年10月31日に10万円の借入れを行い、2025年10月31日に返済する予定であった場合で、2024年10月31日当時の法定利率が3%、2025年10月31日当時の法定利率が年2%であった場合には次のとおりとなります。
まず、利息の利率は利息が生じた最初の時点の利率である3%で計算されますから、借主は10万3000円を返済することになります。遅延損害金の利率については、2025年10月31日の返済を怠り遅滞の責任を負った時点の遅延損害金の利率である年2%を支払うことになります。
このように、民法の改正後は、利率の変動状況によっては、当事者の予想に反して利率が低くなったり、逆に高くなったりする可能性があります。もっとも、当事者間で利息や遅延損害金の利率を予め合意しておけば、上述の法定金利には拘束されませんので、民法改正後は、お金を貸したり借りたりする場合には、利息や遅延損害金を何%にすることにするのかを予め明確にしておく必要性がより一層増すことになります。
【商事法定利率】
現在の商法では、商人間の取引などの利息や遅延損害金の法定利率については、現在の民事法定利率が年5%であることとは異なり、年6%とされております。この6%のことを商事法定利率といいます。
もっとも、今回の民法の改正に伴い、商事法定利率は廃止されることとされており、商人間の取引の法定利率も上述した改正後の民事法定利率によることとなります。
※「個人情報保護法」についてのコラムは、今月号はお休みとさせていただきます。
2.事務所セミナーのご案内
来る11月10日(金)、「人財定着を促進するための長時間労働対応」をテーマに当事務所にてセミナーを開催いたします。
長時間労働は、従業員の健康悪化や意欲の低下、未払い残業代をめぐる紛争、いわゆる「ブラック企業」として企業の社会的評価の低下を招く等、さまざまなトラブルの原因となります。セミナーでは、当事務所所属の榎本久司弁護士が長時間労働をめぐるトラブルを未然に防止し、従業員の定着を図るための対応策をお話しいたします。
このセミナーは主に当事務所の顧問先企業様向けの企画ですが、メルマガ読者の皆様にも特別にご案内をしております。参加をご希望の方は、電話(03-3511-5611)、または、お名前、ご住所、電話番号を明記の上、FAX(03-3511-5612)にてお申し込み下さい。
【テーマ】
「人財定着を促進するための長時間労働対応」
【日時】
2017年11月10日(金) 18時~20時(20時より、自由参加の懇親会を実
施いたします。)
【場所】
弁護士法人中村綜合法律事務所
【参加費】
2000円
3.裁判傍聴のすすめ~その①
憲法82条1項は「裁判の対審及び判決は公開法廷でこれを行ふ。」とし、一部の例外を除き、裁判が国民に公開されるべきことを定めています。これは、裁判が広く主権者である国民一般に公開されることで、国民の監視のもと、裁判の公正を確保しようとするものです。
そこで今月号では、東京地方裁判所の刑事事件を例に、裁判傍聴についてご紹介いたします。本物の法廷で、映画のワンシーンのような、検察官と弁護人の白熱したやり取りが見られるかもしれません。
社会の注目を集める大きな事件の裁判が開かれる日には、傍聴券を求める人達が長い列を作る様子がテレビで紹介されます。しかし、このように傍聴希望者が傍聴席の数を大幅に上回り、抽選となることはまれといえるでしょう。裁判所に直接足を運べばたいていの事件は傍聴することができ、傍聴のための難しい手続も不要です。
裁判所では平日の午前10時から午後5時頃まで毎日、裁判が行われています。
まず、東京地方裁判所では、1階の入口で手荷物検査と、金属探知機を使った身体検査を受けます。裁判は公開され、誰でも自由に傍聴できるとはいえ、危険物等が裁判所内に持ち込まれるのを防止し、安全を確保するためです。
検査を終え、そのまま進むと「開廷表」と呼ばれるその日の裁判のスケジュール表を備え付けたカウンターがあります。タッチパネル方式の「開廷表」には事件名、事件番号、被告人名、担当裁判官、その日に行われる手続内容(審理、判決等)、開廷時刻、法廷番号等が記載されています。
開廷表で傍聴したい事件を探し、開廷時刻や法廷番号等を確認したら、エレベーターで上階に上がり、傍聴したい事件の裁判が行われる法廷番号の法廷に入室します。
なお、開廷中の途中入退席は自由ですが、立ち見はできないため、傍聴席が満席の場合は傍聴できないことがあります。
傍聴の際にメモをとることは自由ですが、録音・録画や写真撮影は禁止されています。また、大きな物音を立てたり、大声を出したりして裁判の厳粛な雰囲気を壊さないよう注意しましょう。
次号以降では、刑事裁判のおおまかな流れと、傍聴の際に着目すべきポイントについてご紹介いたします。
※「麹町グルメ」についてのコラムは、今月号はお休みとさせていただきます。
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